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番外編 俺の、愛おしい人

ウーさんとフーさんが周囲を鋭い目付きで睨み付けていた。 鼠一匹入れるな‼ 神出鬼没の黒竜(ヘイノン)の襲撃を警戒し、若い衆の声が飛び交っていた。 「橘さん、若先生が念のため様子を見に来て下さるって」 和江さんがミネラルウォーターのペットボトルを持ってきてくれた。 若先生とは診療所の斎木先生の長男のこと。和江さんの話では最近まで関西の病院に勤務していたとかで、高齢になった斎木先生をサポートするために家族で移住してきたみたい。 「そうですか、ありがとうございます」 ウーさんとフーさんに肩を支えてもらい、庭の端っこに置いてあるベンチまで何とか移動した。 というか、外に出た時点で、ウーさんにいきなりお姫様抱っこをされ、彼と橘さんの顔からさぁーと血の気が引いて真っ青になったのが分かった。 でもウーさんは慌てる素振りを一切見せず慣れた手付きでベンチまで足元に注意しながら、ゆっくりと運んでくれた。 下ろしてもらった瞬間、吐き気に勝てず軽く嘔吐し、彼の服を汚してしまった。 でもウーさんはまったく気にせず、自分のことよりも、僕の体調のことばかり気遣ってくれた。 彼からシャツを借り、その場ですぐに着替えると、もとの定位置へと戻った。 橘さんが片時も離れず付き添ってくれるから心強い。 柚原さんに焼きもちを妬かれちゃうから、そう言ったら、あなたに焼きもちを妬いたら私に構って貰えなくなります。それくらい分かりますよ。彼にとって死活問題ですしね。クスリと笑われた。

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