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番外編好看(ハオカン)

それから10分くらいして、黒い大きな鞄を脇に抱えた白衣の男性がはぁはぁと息を切らしながら姿を現した。 年は30才くらいかな? スタイルが良くて格好いい。 男らしい眉に切れ長の双眸、頬から顎にかけての精悍なライン。ちょっと怖いぐらい整っていた。 関西の病院に勤務していたのなら、こてこての関西弁を話すのかな、てっきりそう思っていたら、 「惣一郎さんからすんげぇ、めんこい姉ちゃんが中国から来たんだって聞いて、楽しみにしてたんだ」 優しさを湛えた福島訛りの声が耳に届いてきて驚いた。 「おめさんがその中国人か?」 警戒心を露にする若い衆には見向きもせず、人懐こい笑顔とともにウーさんとフーさんに近付いた。 「あの…………先生……」 「わがってるから。めんこい姉ちゃんの顔を拝むのがまず先だ。自己紹介はそれからでもいいべ」 若いのになんでこんなにも訛っているのかな。面食らってぽかぁ~んとしてしまった。 キャラの濃いなかなか面白そうな先生だ。 「なんだ男じゃねぇか」 フーさんとウーさんにジロリと見下ろされても、先生は全く動じなかった。 それどこか、 「好看(ハオカン)」 そう独り言のように口にすると、ウーさんの頬の傷をいとおしげに見詰めた。 何をするのかと固唾を飲んで見ていたら、爪先立ちになり背伸びして、手の指先でその傷にそっと触れた。 これには当の本人が一番驚いたと思う。 ハオカン……ってどういう意味なのかな? 斉木先生も中国語が話せるのかな?

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