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番外編 好看

「ウー、めっけだ」 次の日から若先生、診察と往診の合間にちょくちょくウーさんに会いに来るようになった。決まって日本酒のワンカップと、駄菓子やさんで売っている酢イカやスルメイカなどつまみ持参で。 まるでストーカーだ。 「あ?仕事?誰もいねべ」 ベンチに座り隣に座るように指示した。 「………」 何かを言い掛けて諦めるウーさん。 渋々ながらも左隣に間隔をわざと開けて腰を下ろした。 「ほら、食え」 どんなに勧められてもウーさんは首を横に振り一切口に運ばなかった。 「おめさんが動きまわっから、ウーが食わねえんだろ?」 山のような洗濯物が入った籠を両手に抱え外に干しに出掛けたら、とんだとばっちりを受けた。 「まぁ、いい。おめさんも座れ」 「え?ちょっと待って」 音もなく腕が伸びてきて腕をむんずと掴まれ、空いていた 右隣に強引に座らせられた。 いきなりだったから、洗濯物をひっくり返してしまった。拾うにも大きいお腹が邪魔で屈むことが出来なかった。 「あとで拾ってやっから、少し話しに付き合え」 先生はそう言うと雲ひとつない青空を見上げた。 「弱気ものを助ける為に医者になったのに……なんでだべな。おめさんも、なんでまたヤクザの女房なんかになったんだ?苦労すんのがわがってたべ」 「好きになったひとが、たまたまヤクザだっただけ。年はうんと離れているけど」 「なるほどな」 先生が日本酒のワンカップの蓋を開けると、一口呑んでからスルメイカを口に運んだ。

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