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番外編 あした、はれますように

「ねぇママ、あしたはれるかな?」 夕方からぽつぽつと降り始めた雨は夜になり本降りの雨に変わった。 窓の外を眺めていた一太が今にも泣きそうな顔になった。 「卒園式だものね、晴れるといいね」 「ううん、ちがうの」 一太が首を横に振った。 「あした、とりさんとフーさんのけっこんしきでしょう。パパからね、けっこんしきは、いっしょうにいちどきりのことだからってきいたから、はれてほしいな」 「そっか、ありがとう一太」 自分の卒園式の天気よりも鳥飼さんたちの結婚式は晴れて欲しいと健気に願う一太。何て優しい子なんだろう。 頭を撫でてあげた。 「たちばなさんからきいたんだけど、パパだけ、にかいけっこんしきあげたって、なんで?ねぇ、なんで?」 「あ、えっと…………」 どう答えたらいいか分からなくて言葉に詰まってしまった。 「子どもはそろそろ寝る時間だぞ」 ちょうどそのとき彼が部屋に入ってきた。 遥香と一緒に作ったてるてる坊主をぶらぶらと提げて。 「大人にはいろいろと事情があるんだ。一太にもそのうち分かる」 「ふ~~ん、そうなんだ」 いまいち納得していないのか不思議そうに首を傾げる一太。 ひょいと手を伸ばし、カーテンのレールにてるてる坊主を下げはじめた彼の背中をじっと見詰めた。

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