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番外編 あした、はれますように

ーー思い出したくもない辛い過去を話してくれてありがとう。お偉いさんの圧力で箝口令が敷かれ日本ではそう話しは一切報道されないから。 遥香くらいの年で誘拐され、想像を絶する劣悪な環境で育ち、常に知らない大人たちに監視され監禁されていた二人の過去に改めて触れ、出来るならもっと早く助けてやりたかった。そうすれば、一太とおんなじように幼稚園に通わせて、ランドセルを背負って小学校にだって通うことが出来たのに・・・・ごめんな。 涙を流し逆に二人に謝っていた。 「どうした?」 急に声を掛けられたからドキっとしてしまった。 えっと・・・・・ 返す言葉を探していると、 「年のせいかな?最近涙脆くて、困ったもんだ。泣く子も黙るおっかない鬼だったのに、これじゃあ、だだの泣き虫の鬼だな」 頭の上で彼が苦笑いしたのが分かった。 「僕は泣き虫鬼さんの遥琉さんの方がいいなぁ。強くて格好いい遥琉さんも好きだけど」 「未知?」 怪訝そうな声が返ってきた。 「だってね、相手を大切に想う気持ちがなかったら、一緒に泣いたり、笑ったりすることが出来ないでしょう?遥琉さんは優しいから、だから、紗智さんと那和さんの気持ちが分かるんだと思う」 「いやぁ~~照れるな」 笑いながら、また背中がむず痒くなってきたと一人言のようにボヤいていた。 「僕は何があっても誰よりも優しい、泣き虫鬼さんの遥琉さんについていくから」 「おぅ。でも・・・・・」 そこでなぜか言葉を濁された。 「いゃな、この年になるといろいろあるだろ?髪が薄くなったり、匂いだって・・・・・ようはオヤジ臭ってヤツだよ。未知が寄って来なくなるんじゃないか、こんなふうに甘えさせて貰えなくなるんじゃないかっていつもヒヤヒヤしているんだ」 少しずつ彼の声のトーンが下がり、最後は蚊のなくような声になっていた。

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