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番外編 卒園式の朝

「一太くん行ってらっしゃい‼」 「卯月さんも、未知さんも気を付けてね」 テントを設営していたご近所さんみんな手を一旦止めて笑顔で手を振ってくれた。 一太も、「おじちゃん、おばちゃん、ちゅうざいさん、せんせい、いってきます‼」 負けじと笑顔で答え大きく手を振っていた。 ん?今、確かちゅうざいさんって・・・・ キョロキョロと辺りを見回すと、グレーのツナギを着て草刈り機を肩に担ぎ、慣れた手付きでペンションの回りの草刈りをしていた男性が手を止め、一太に向かって手を振ってくれた。 今の今まで、実はヤクザだということをご近所さんに黙っていた彼。 でも、世話になったご近所さん、一軒、一軒巡り、挨拶をして回った彼。そこで正直に菱沼組の組長であることを包み隠さず話し、黙っていて悪かったと頭を下げた。 駐在さんにも、斉木先生にも、コンビニエンスの店長さんにも、タクシーの運転手さんにもちゃんと説明し、黙っていて悪かったと謝ってきたみたい。 ーー私たちにとって卯月さんは卯月さんだもの。惣一郎さんとこの孫夫婦、それでいいじゃないーー そうみなさんに言ってもらい、彼、すごく感謝していた。 駐車場に向かって歩いていたら、 「卯月さん待ってくれ‼」 先生が息を切らし後ろから追い掛けてきた。 「倅からこれを渡してくれと頼まれていたんだ。すっかり忘れていた」 手に握り締めていたUSBメモりを彼に渡した。

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