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番外編 卒園式の朝

「ちょっと待って…………てば………」止める間もなかった。 「ようはボディーガードだ」 橘さんに電話をしに行っていた彼が戻ってきた。 「若い衆に幼稚園周辺のパトロールを頼んだ。あと、さっきの車のナンバーを蜂谷に調べてもらうようにも頼んだ」 勘の鋭い遥琉さんは、記憶力と洞察力も昔から抜きん出ている。 さっきの車のナンバーも、運転していたのが男性か女性か、他に同乗者がいたのか、すべてお見通しだった。 「ウーとフー、お前らが警護にあたることは園長の許可は貰ってある。カモフラージュにならないが、これを着ろ」 二人にエプロンを渡した。 くまさんの絵柄が描いてある可愛らしいエプロンを前に二人の顔が一瞬だけ固まった。 でも主の命令は絶対。 頷くとすぐに身に付けた。 「いいかお前ら、こっちがウー先生で、そっちにいるのがフー先生だ。時間が来るまで遊んでもらえ」 始めこそ怖がって近付こうともしなかった子どもたち。でも、1人また1人と…… 怖いもの知らずの男の子たちが集まってきた。 「ねぇ遥琉さん、そんな時間ないよ」 「分かってるよ。びびりまくって、ギャン泣きされるよりはましだろう?」 「それはそうだけど………」 「二人とも顔に似合わず子どもが好きだから、まぁ大丈夫だろう」 彼の言う通り、さっきまで無表情だった二人は、自然な笑顔で子どもたちに接していた。 言葉が通じなくても、笑顔は万国共通。 一太も二人に交互に高い高いをしてもらい歓声をあげていた。

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