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番外編 一太の夢は………

厳粛な雰囲気の中、卒園式は式次第にそって粛々と執り行われた。 緊張しながらも無駄話を一切せず、まっすぐに前を見据える一太。 その凛々しい横顔は彼にそっくりで。 立派に成長した息子の晴れ姿に感動して思わず涙が零れた。 「たく、泣き虫なんだから」彼がハンカチで涙を拭ってくれた。 「そういう遥琉さんだって、目が真っ赤だよ」 「しゃあないだろう」 小声でそんなことを話していたら、卒園証書授与がはじまった。 担任の先生がピアノの隣に立ち、一人ずつ名前を呼びはじめた。 呼ばれた園児は着物姿の園長先生が待っているステージへと向かい、その間、先生が将来の夢を読み上げてくれた。 男の子はユーチュバーやスポーツ選手・警察官・TVアニメのキャラクター、女の子はケーキ屋さんやパティシエ・アイスクリーム屋さん・看護師さんや幼稚園の先生が多い中、一太の夢は全く違っていた。 ーー卯月一太くんの夢は弁護士になることです。弱い人を助け、パパみたく誰からも慕われる格好いい大人になりたいですーー 「弁護士か。なるほどな、一太も考えたな」 デジカメで写真を録りまくりながら彼も感心していた。 一太には無限の可能性がある。 だから何がなんでもパパの跡を継いで菱沼組の組長にならなきゃいけないってことはないんだよ。 遊びも勉強もうち。たくさん学び、いろんな経験を積んで、夢を叶えて欲しい。 着席するとき一太がチラッと一瞬だけ後ろを振り返った。 パパ、ママ、一太頑張ったよ。 満面の笑みを浮かべ、先生に見付からないように小さくVサインをしてくれた。

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