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番外編 結婚典禮

「おぃおぃ、子供の前だぞ」 やれやれとため息をつきながら惣一郎さんが姿を見せた。 「一太くん、ハルちゃん、そうじぃじと和江さんにカレーを作って下さいって頼みに行こうか?」 「うん‼」 「やった‼」 一太と遥香はぴょんぴょん跳ねて大喜び。 「いちた、かずえさんのおてつだいする」 「ハルちゃんも」 「おっ、二人とも偉いな」 惣一郎さんが二人の頭を撫でてくれた。 「おしゃけくちゃい」 遥香が鼻を摘まんだ。 「いゃあ~~度会さんとさしで酒が呑めるなんて滅多にないからな。ちいと呑みすぎたようだな。ごめんな、ハルちゃん」 「うん、だいじょうぶ」 遥香が見せる笑顔に惣一郎さんの表情は緩みっぱなしになった。 「おぅ、そうだ。すっかり忘れるところだった。鳥飼さん、旅館からの迎えの車が来てるぞ」 結婚式の夜くらい夫婦水入らずで過ごすようにと、彼が岳温泉にある旅館を予約してくれた。 「あのな鳥飼さん、お節介焼きのじじいの一人言として聞き流してくれ。お前さんとフーさんは今まで全く別の人生を歩んできたんだ。他人同士だったんだ。知らないことがあって当然だ。だから、夫婦喧嘩は幾らでもしたらいいんだ。例え言葉は通じなくても、顔をちゃんと見て話せばいいんだよ」 「惣一郎さんありがとうございます」 鳥飼さんが深々と頭を下げた。 フーさんは那和さんに「何って言ってるんだ?早く通訳しろ」と言わんばかりにじろりと睨み付けた。

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