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番外編 ウーさんはじめての焼きもちを妬く

結婚式のときからずっとマナーモードにしていた彼のスマホがぶるぶると振動した。 画面にチラリと目を落とす彼。 「千里からですか?」 隣にいた橘さんに聞かれ頷くと、 「あぁ、裕貴や遼成、それに鷲崎からも着信があった。若先生、事情を…………」 ウーさんの隣の席をキープし、嫌がられながらも、あちこちベタベタと触りまくっていた若先生。 いつの間にかウーさんの膝枕で横になっていた。 「うちのバか息子には困ったもんだな」 口をもごもごさせながら幸せそうな寝顔で眠る見て斉木先生も笑うしかなかったみたい。 「息子がこっちさ帰ってきたのは、ヘイノン?よく分からないがソイツの手下になんべんも殺されそうになり、もういいべ、医者はどこでも出来る。うちさ帰ってこいって儂がしつこく言ったからなんだ。本人はN地区で医者を続けたいって最後の最後まで言ってたんだが・・・・ 命は一つしかない、頼むから大事にしてくれって頼み込んだ。こっちさ帰って来て、めんごい姉さんと見合いでもしたらいいって思って、それで惣一郎に誰か紹介してくれって頼んだ。まさか男を紹介されるとは思ってもみなかったが」 老酒をお猪口でちびちびと呑みながら、二人を何度もチラ見しながら、本音を打ち明けてくれた。 「先生はやはり反対ですか?」 彼が老酒を注ぎながら声を掛けた。 「さっきまではな。男の嫁なんてありえないって。でも、鳥飼さんたちの結婚式を見たら考えが変わった」 ウーさんと何気に目が合い会釈されると、斎木先生嬉しそうに目を細めていた。

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