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番外編 ウーさん初めての焼きもちを妬く

「おらはただの田舎のヤブ医者だぞ」 若先生がおもむろに体を起こした。 「じゃあ聞きますが、本部の監視カメラに何故あなたが映っているんですか?」 「たまたま通り掛かっただけだろう」 「白を切る気ですか?3日も続けて映っていたんですよ。それがたまたま通り掛かっただけだと?一緒にいた女性は誰ですか?恋人ですか?若先生はウーさんや私たちをはなから騙すつもりだったんですか?」 追及の手を緩めない橘さんに対し、眠たそうに大きな欠伸をながら背を伸ばした。 「たく、しょうがねぇな……」 口では敵わないと判断したのか、 「組長に直接会って直談判しようと思ったんだ。でも、組長がおらみたいな見るからに怪しげな一般人に会ってくれる訳がねぇだろう。門前払いされるだけだろう」 開き直りウ―さんの前にあったまだ開けていない缶ビールを取ろうと手を伸ばした。その直後-- 「いででで……」 ウ―さんが若先生の手首を鷲掴みにし物凄い形相で睨み付け、爪先を皮膚に食い込ませた。 当然ながらかなり怒っている。 「焼もちを妬くんでねぇ。おらはおめさん一途だ。彼女は付き合っていた彼氏と黒竜に騙されて多額の借金を背負わせられクスリ漬けにされた挙げ句、夜の街に沈められ性奴隷にされた女だ。堕胎させるために男が彼女を診療所に連れて来た。たった10ヶ月の間に三回も妊娠させられて、体はもうボロボロだった。警察は信用出来ない。役所の人間もだ。彼女を助けられるのは昇龍会しかいないだろう。違うか?」 必死に訴え掛ける若先生の気持ちがウーさんにも伝わったのかすっと静かに手を離してくれた。

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