1021 / 3640
番外編ウーさんはじめての焼きもちを妬く
「あとで地竜に怒られても知らねぇぞ。マーでも姐さんでも、お前の好きな呼び方で呼んだらいい」
彼の言葉を紗智さんが訳してくれた。すると嬉しそうににっこりと微笑んでくれた。
「那和、ウ―さんが昨日のこと謝りたいって。だから隠れていないで出て来たらいいのに」
「じゃあさぁ絶対に怒らない、焼きもち妬かないって約束してよ」
那和さんがこれでもかと頬っぺたを膨らませ、ドアから顔だけ出した。
「若先生も酔っ払っていたとはいえ、不愉快な思いをさせてしまってすまなかった。そう謝っていた。今回だけ許してやれ」
「僕が人妻って若先生、絶対に分かってない」
「バーバがあとでちゃんと説明するから、そろそろ機嫌を直してくれ」
彼に言われ、びくびくしながらもダイニングに入ってきた。
ウーさんがごめん、そう言ってるのかな?
深々と頭を下げた。
「さぁ、仲直りしたことですし、朝御飯を食べてください」
橘さんに促され椅子に座ろうと背凭れに手を置いた那和さん。
そこで紗智さんとアイコンタクトを取ると、静かに口を開いた。
「那和、無理してまで話すことはない」
「まだ何も言ってないよ」
「古狸のことだろう?なら、尚更だ。まずは飯を食え。冷めたら美味しくなくなる」
「バーバありがとう」
「だからいちいち言わなくてもいいって。ほら紗智も座れ。あと、ウーお前もだ。飯はみんなで食べた方が旨いからな」
彼に言われ那和さんと紗智さん、そしてウーさんも椅子に腰を下ろした。
「おぃ‼そこ俺の席だ‼」
一足遅れた鞠家さん。
紗智さんの隣の席を那和さんとウーさんに取られ、ガックリと肩を落としていた。
ともだちにシェアしよう!