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番外編 さよならじゃない。
朝御飯を食べたあと、みんなで手分けして大掃除をはじめた。
僕はみんなの邪魔にならないように、和江さんに手伝ってもらい子供たちの荷物をダンボールに詰めていた。
「明日から寂しくなるわね。あら、やだ。泣かないって決めたのに・・・・」
和江さんがずずっと鼻を啜り、目頭を手で押さえた。
「僕も子どもたちも寂しいです。ずっとここにいたい。ここでこの子を産みたい。でも、こんな僕でも姐さんと呼んで慕ってくれる組のみんなを、家族同然の彼らを、僕は彼と一緒に守らないといけない…………」
お腹を擦りながら、いつの間にか僕も泣いていた。
「ごめんさない」
「私の方こそ泣かせてしまってごめんさないね」
和江さんがそっと優しく肩を抱き締めてくれた。
「ハルちゃんもさみちい」
「いちたも」
窓拭きのお手伝いを一生懸命していた一太と遥香が、雑巾を放り投げてバタバタと駆け込んできて、和江さんにぎゅとしがみついた。
「一太くん、ハルちゃん、ありがとう。二人ともとってもやさしいから、和江さん、涙が止まらなくなっちゃったわ」
ボロボロと大粒の涙を流しながら、僕たちを包み込むように抱き締めてくれた。
窓拭きをしていた紫さんも声を震わせハンカチで目頭を押さえていた。
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