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番外編 さよならじゃない。

「大丈夫ですよ」 不安そうな目で何度も後ろを振り返る紗智さんに橘さんが優しく声を掛けた。 「橘さんは心配じゃないの?」 「そりゃあ心配ですよ。でもそれが彼の仕事なんです。私には無事に帰って来るように祈るしか出来ません」 「そうだよね。組の幹部として頑張ってる彼、すごく格好いい。俺も、橘さんを見習って、無事に帰って来るように祈る」 橘さんと一緒に太惺と心望をチャイルドシートに座らせてくれた。 「オヤジ、俺にだって度会さんの助太刀くらい出来ます」 鳥飼さんが座席から身を乗り出した。 「あぶねぇからちゃんと大人しく座ってろ。フーと約束したんだ。二度と鳥《ニァォ》を危ない目に遭わせないってな。今までの経験を生かし裏方として組を支えてくれればいいんだよ」 隣に座っていたフーさんが焼きもちを妬いたのかむすっと不貞腐れて鳥飼さんの袖を強く引っ張った。 「俺が愛しているのはフー、お前だけだ。だから機嫌を直してくれ」 那和さんたちをチラ見して「笑ってないで、早く訳してくれ」フーさんの顔色を伺いながら小声で頼んでいた。

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