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番外編 古狸と狐狸妖怪

黒光りする門の前でワゴン車が静かに停まった。 事務所の前に四六時中警察が張り込んでいるみたいで、僕と子どもたちの安全を最優先に考え、真っ直ぐ度会さんの家に向かったのだった。 「お帰りなさい、オヤジ」 彼が先に車を下りると、一列に並んで待っていた黒ずくめの服を身に付けた男たちが一斉に腰を九の字に曲げ頭を下げた。 「度会さんから連絡は?」 出迎えた弓削さんら幹部の皆さんに彼が声を掛けた。 「古狸と話しが済んだんで、こっちに向かっています」 「そうか分かった」 彼が一太たちに車から下りても大丈夫だと言うと、ニコニコと愛くるしい笑顔を振り撒きながら車から下りてきた。 頭を下げ続ける男たちにペコリと頭を下げると、 「ゆげさんめっけ!」 「ゆげしゃん」 二人とも弓削さんが大好きだから真っ直ぐに足元に飛び込んでいった。 弓削さんは嬉しくて顔が緩みっぱしになった。 「お帰り二人とも」 二人を片方の腕でそれぞれ抱き上げてくれた。 「ゆげさん、いちたとハルちゃんがいなくて、さみしかった?」 「そりゃあ寂しかったよ」 「ねずみしゃんにたべられなかった?」 「あぁ。心配してくれてありがとうな」 おじちゃん、一太とハルちゃんがいなくて、毎日寂しいんだ。鼠に食べられるかも知れない。 何日か前に子どもたちと電話で話した時にそんなことを口にしていた弓削さん。 一太も遥香もそれをちゃんと覚えていた。

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