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番外編 古狸と狐狸妖怪
「たいくんもここちゃんも見ないうちにおっきくなったな」
那和さんと紗智さんに抱っこされ車から下りてきた太惺と心望の顔を恐る恐る覗き込む弓削さん。
半年近く会ってないから絶対に泣かれる。
もし泣かせたらオヤジに首を絞めれる。とぶつぶつと独り言を口にしていた。
「たいくん、ここちゃん、ゆげさんだよ」
「ゆげしゃんによろちくねだよ」
一太と遥香に声を掛けられると、二人はにっこりと笑って、あーうーと弓削さんに話し掛けた。
「オヤジの子どもとは思えないくらい可愛い」
愛らしいその仕草に思わず本音を漏らした弓削さん。
「それは悪かったな」
彼も幹部やみんなの前では、怒るにも怒れなかったみたい。
「フー、みんな見てるから」
鳥飼さんと恋人繋ぎして車から下りてきたフーさんと、橘さんと一緒に下りてきたウーさんにみんなの視線が一斉に向けられた。
鳥飼さんは顔を真っ赤にしフーさんの手を離そうとしたけど、フーさんは口を真一文字に結び決して離そうとはしなかった。
「写真で見るよりでっかいな」
弓削さんも驚いて二人を見上げていた。
「とりかいさんとてをつないでいるのがフーだよ」
「とりしゃんのはなよめしゃん、かぁいい」
一太と遥香が二人のことを弓削さんに一生懸命教えてくれた。
「ほっぺにきずがあるのがウーさんだよ。フーさんもウーさんも、ママのたまよけだよ」
「ハルちゃんね、フーしゃん、ウーしゃん、
すゅき」
「そっか、人は見た目で判断するものじゃないからな。若頭の弓削だ、宜しく」
弓削さんが二人に会釈すると、紗智さんが、
若頭はナンバー2。バーバの次に偉い人…………分かりやすくいえば、菱沼組のアンダーボス。
そう二人に伝えると、二人はあわてて頭を下げた。
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