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番外編古狸と狐狸妖怪

「橘、たまには亭主を褒めてやれ。柚原も鞠家も惚れ惚れするくらい男らしくて格好良かったんだぞ。この命に代えてもカタギの人を巻き込むわけにはいかない、撃てるもんなら撃ってみ!ドスのきいた柚原の声、久し振りで聞いて身震いがするほど痺れた。橘、お前はいい亭主を持った。紗智、お前さんもいい亭主を持ったな」 片時も離れたくないとばかりに、震える手でずっと鞠家さんの手を握り締めていた紗智さん。 度会さんに掛けてもらった言葉がよほど嬉しかったのか涙を溢していた。 「たく、泣き虫なんだから」 「だって、ねぇ、高行さんにねぇ、何かあったらと思うと………」 しゃくりあげなから言葉を懸命に紡いだ。 「愛しい妻を残して先に逝くわけないだろう」 人目をはばかることなく歯の浮いたような台詞をさらりと口にする鞠家さん。 「愛してるよ紗智。心配してくれてありがとう」 おでこの髪を指で払うと、チュッと軽く口付けた。 いつまでたっても二人は新婚さんのままで、相変わらずラブラブだ。 「橘、ぼけっと突っ立ってないで、お前も柚原に褒美をやらんか」 「今、ここで………ですか?」 度会さんに言われ、橘さんは、困惑の表情を浮かべながら、柚原さんをチラ見した。 「匂いと傷口にしみるのが大っ嫌いだけど、優璃が褒美をくれるならがんばる」 那和さんの手から消毒液のボトルを受け取ると、嬉しそうに尻尾をびゅんびゅん振りながら橘さんの前に差し出した。 「たく、しょうがないですね」 なんだかんだといって橘さんも柚原さんも、紗智さんたちに負けないくらいラブラブで、見ててほんとに羨ましい。 「俺と未知だってお前らに負けないくらいラブラブだ」 負けず嫌いの彼。 別に競わなくてもいいのに。 「いちいち言わんでもここにいる全員、それを分かってるよ。卯月と未知さんがみんなのいい手本になってくれているから、夫婦喧嘩もせず、どの夫婦も仲睦まじく、お互い支え合っている。菱沼組は安泰だ」 度会さんが機嫌良く笑っていた。

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