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番外編 古狸と狐狸妖怪
そんな二人のやり取りを黙って眺めていたウーさんとフーさんがぷぷと吹き出した。
「本当の兄弟みたいだって?まぁ、遥琉とは長い付き合いだからな」
ウーさんが彼に話し掛けた。
「自分はただでさえ目立つからやっぱり行かないって。マーとここで若先生を待ってるって」
「本当にそれでいいのか?」
彼が心配そうな声で聞き返した。
「全然可愛げのない男の俺を好きって言ってくれた彼を信じるってさ」
「可愛げのないって……若先生に恋してるウーさんはとっても可愛いよ。そうでしょう、遥琉さん、鞠家さん」
「そうだ、未知の言う通りだ。ウー、もっと自信を持て」
彼が背伸びして、ウーさんの肩をぽんぽんと軽く二回叩いた。
「老大哥(ラオ ダー グァ) シェ シェ」
「だから、いちいち礼はいらない」
恥ずかしいのかな?
ごほんとわざとらしく咳払いをしていた。
「オヤジ、そろそろ出掛ける時間です」
弓削さんが数人の若い衆を引き連れて姿を現した。
「おぅ。鞠家、悪いが留守を頼む」
椅子に掛けてあった上着を颯爽と肩に担ぐと、がらりと彼の表情が変わった。
優しいバーバの顔から、菱沼組の組長としての侠気溢れる男の顔に。
橘さんや柚原さんたちと夕飯の買い出しをしながら通学路を見に行ってここにはいない一太がもし見たら間違いなく、目を輝かせてパパ、格好いいを連発するはず。
僕も、大人の色香を纏うその男っ振りに見惚れていた。
彼にはもちろん内緒だけど……
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