1034 / 3640
番外編 古狸と狐狸妖怪
それからしばらく考え事をしていたウーさん。何かを決心したか、大きく頷いて、鞠家さんや紗智さん、那和さんらに話し掛けた。
「そうくると思ったよ。誰も引き取り手がないなら俺と紗智で引き取ろうと考えていた」
鞠家さんにはウーさんがどう答えるか分かっていたみたいで、さほど驚く素振りを見せなかった。
「でも本当にいいのか?一人でなんか絶対に育てられないぞ。生まれつき足がなく、心臓にも先天性の病気を抱えている。そう長くは生きられないかも知れないんだぞ」
ウーさんが首をブンブンと横に振った。
「マーが言ってた。子どもには罪はない。生まれてきてはいけない子どもなんていないんだって。橘から、親が育てられない子どもは施設に入るんだ、そう聞いた。それに俺一人じゃない。彼がいるって………」
紗智さんがウーさんの言葉を通訳してくれた。
「彼って……若先生のことか?」」
ウーさんは大きく頷いた。
「あぁ見えて医者としての腕は確かだ」
「ウーさん、若先生に逆にプロポーズしたらどうかな?家族になろうって、一緒に育てようって」
ウーさんに僕の言葉が、想いがどうか届きますように。
「マー、シェ シェ」
「だって、ウーさんにもフーさんと鳥飼さんみたく若先生と幸せになってほしいもの」
泣き虫なのは昔からだからしょうがない。
鼻をズズと啜りながら笑顔で返した。
ともだちにシェアしよう!