1035 / 4007
番外編古狸と狐狸妖怪
「何度言ったら分かってくれるんだべ。俺は斉木。医者だ。ウーに会わせてくれ‼」
若先生はどこにいてもよく目立つ。
声も通るから尚更。
これじゃあ、すぐバレると思うんだけど、よく今まで見付からなかったとつくづく思う。
「若先生、声がおっきい」
「子どもたちお昼寝しているからしーだよ。しー。分かる?」
紗智さんと那和さんが唇に人差し指を立てて小声で話し掛けた。
「それはすまなかった」
「若先生、汗すごいよ」
「タオル持ってこようか?」
「大丈夫だ」
ポケットからハンカチを取り出す若先生。そのとき小さな箱が下に落ちた。
「なんだべな」
すぐに拾い上げようとしたけど那和さんの方が早かった。
「もしかして、これ」
「何でもいいべ。おめさんには関係ねぇべ」
「関係あるし。そんなこと言ったら二度と通訳しないよ。中国語だって教えないよ」
「いやぁ、それは困るんだな」
若先生が髪をくしゃくしゃと掻いた。
「プロポーズの言葉、もう一回教えてくんちょ。緊張して度忘れしっちまった」
「若先生、その必要はないよ」
クスクスと笑いながら那和さんと紗智さんが顔を見合わせた。
「若先生は、子どもは好きですか?」
「なんだべ未知さんまで急に。子どもは好きだ。でも、一番好きなのはウーに決まってっぺ。分かってることいちいち聞くな」
「なら良かった」
若先生の言葉にほっと胸を撫で下ろした。
「若先生、ウーさんのこと・・・・ううん、一番おっきい息子を宜しくお願いします」
ぺこりと頭を下げた。
ともだちにシェアしよう!

