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番外編 古狸と狐狸妖怪

ーー卯月組の組長をはよう出さんか‼ ーー善人ずらして、とんだ悪党だ‼ 突如として響いた拡声器の声が、それまでの和やかな雰囲気を一瞬で掻き消してしまった。 大きい音が苦手な一太。 音に驚いてびくっとすると、両方の耳を手で塞ぎ、ガタガタと震えだした。 「たいくんとここちゃんたち見てくる。マーは一太くんの側にいてあげて。紗智、行こう」 「うん」 那和さんと紗智さんが子どもたちが寝ている座敷へと大急ぎで走っていった。 「古狸め、遥琉の留守をいいことにありもしないことを言ってくれる」 着流しを粋に着こなした度会さんが、根岸さんや伊澤さんらを引き連れて姿を現した。 いの一番に一太に駆け寄ると頭を分厚い大きな手で撫でてくれた。 「もう怖がらなくても大丈夫だ」 「わたらいさん・・・・いちた、あの・・・・えっと・・・・・」 一太は顎や唇を震わせ啜り泣いていた。 「しゃあない。パパ代理は俺しかいないか。もしぎゃーっと泣いたら、あとは橘、頼んだ」 「は?」 「は?じゃあねよ。お前、ままたんだろ?一太、パパがいるから大丈夫だ」 鞠家さんが一太をぎゅっ、と優しく抱き締めると、両腕で抱き上げてくれた。 ゆらゆらと左右に体を揺すると、ようやく安心したのか、一太はピタリと泣き止んだ。 ーー人殺しのやぶ医者、隠れていないでさっさと出で来んか‼ 若先生がブンブンと首を横に振った。 「ハッタリだ。俺が患者の命を奪う訳ねぇべ」

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