1039 / 3640

番外編 古狸と狐狸妖怪

「実はもう一つあるんだ」 「え?まだあるの?」 「若先生に一人じゃ店に入れないって言われてさぁ………目を閉じて15数えられるか?」 店? 何の? キョトンとして彼を見上げると、優しい微笑みが返ってきた。 「ほら早く」 「あっ、う、うん」 彼に急かされ慌てて目を閉じた。 1、2、3………… 口付けの余韻が残る唇はかすかに熱を帯びていた。 数を数えながら無意識のうちにキスをねだっていたみたいで。 数え終わる頃、彼が困ったように苦笑しながらチュッと触れるか触れないくらいのキスを唇にしてくれた。 「あまり煽らないでくれ」そう独り言を口にしながら。 右手首にずしりと感じる金属の重みを感じチラっと見るとシルバーに輝く腕輪が嵌められていた。 「遥琉さん、これ」 「地竜から貰ったものは壊れただろう?一応な、【《《俺》》と地竜から、愛する未知へ】って折角だから英文で刻印してもらった」 「嬉しい。ありがとう。でもいいのかな?僕だけこんなに幸せで」 「何言ってんだ。未知は幸せになる為に産まれて来たんだぞ。俺がとことん幸せにしてやるから覚悟しておけ」 うん‼笑顔で大きく頷いた。

ともだちにシェアしよう!