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番外編 古狸と狐狸妖怪

暴力団は必要悪じゃないのよ。 現実から目を背けず、ちゃんと見て。 今も泣いている子が大勢いるのよ。 着物姿の千里さんが取材に押し寄せた報道陣に毅然とした態度で訴えかけていた。 千里さんといえば若先生のお父さん。 今頃きっとテレビに張り付いて見てるはず。 斎木先生、愛しの千ちゃんは今日も美しくて、そして誰よりも強く、格好いいよ。 噂をすれば影がさすで、彼が電話を切ると間髪いれずに着信音が鳴った。 画面をチラっと見るするなり、はぁ~とため息をつく彼。 電話をしてきたのはおそらく斉木先生だ。 ー卯月見たか?俺の千ちゃんの晴れ姿。相変わらず別嬪さんだ。聞いてるか?ー 興奮覚めやらずといった感じで大きな声で一方的に話しをしていた。 鼓膜が破れそうだ。彼がぼそっと呟き、スマホをテーブルの上に置いた。 「しっかり聞いてますよ斉木先生。ニュースも見てました」 ーそうか、じゃあ、藤色の着物、どうだった?千ちゃんにはちと地味過ぎたかな?ー 「千里が着ていた着物って、斉木先生が?」 ー結婚祝いにな。二児のママになっても千ちゃんは、俺にとって永遠のマドンナだ。ほんとにめんごいんだぞ。声も可愛らしいしー 「そうですね」 まさか若先生に続いて斉木先生からも片想いの惚気話を延々と聞かされることになるとは思ってもみなかった彼。 さすが親子だな……額に手を置いてがっくりと肩を落としていた。

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