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番外編 古狸と狐狸妖怪

もうやだ、ただでさえ泣き虫なのに・・・・鼻をずずっと啜ると、 「たく、泣きすぎだ」 困ったように苦笑いすると右手をそっと握り締めてくれた。 「おぃ、てめぇーー‼」 背後に気配を感じ振り返ろうとしたら、ぎゅっ、とウーさんに後ろから抱き締められた。 もしかしてウーさんも泣いているのかな?肩が微かに震えていた。 「マー」 「心配しなくても大丈夫だよ。若先生も斎木先生も、それに惣一郎さんと和江さんもいるから、ウーさんは一人じゃないよ」 言葉が通じないもどかしさを感じながら、ウーさんを懸命に励ました。 「ウー、未知から離れろ‼」 彼が声を荒げた。 「おぃおぃ、《《息子》》に焼きもちを妬いてどうするんだ」 鞠家さんがやれやれとため息をついた。 「ウーは若先生にあと一年はここにいたい。マーの側にいたい。マーを守りたい。そうはっきりと伝えた。古狸とカレン、それに、ダオレンから未知や子どもたちを守れるのは自分とフーしかいない。地竜との男の約束を反故にする訳にはいかないって」 「若先生は?何て言ってんだ?」 「ウーの決意は揺るぎようがない。それは若先生も分かってるよ。だから、週末は岳温泉からここに通うって」 「そうか、まぁ、世の中には色んな夫婦がいるからな。ウー、未知に甘えてばかりいたら若先生に焼きもちを妬かれるぞ。俺も人のことは言えんがな」 早く通訳してくれとばかりに、じーと鞠家さんを見詰めるウーさん。

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