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番外編 古狸と狐狸妖怪
紗智さんと那和さんが子どもたちを庇うようにして抱き寄せると、鞠家さんウーさんが身を挺して、その直後に建物を一瞬のうちに駆け巡った皮膚をちくちくと刺すような生暖かい強い風から四人を守ってくれた。
「未知」彼が駆け付けてくれて盾になってくれた。
肩からそぉーと見ると玄関付近から白煙がもうもうと立ち込めていた。
「太惺と心望のところに行かなきゃ」
「大丈夫だ。橘と柚原と一緒だから」
「じゃあ、若先生は?紫さんは?度会さんは?あと………そうだ、フーさんは?」
頭のなかが真っ白になって、どうしていいか分からなくて、彼の胸にしがみついた。
爆風で飛んできたプラスチックの破片が頬を掠めたみたいで。血を流しながらもフーさんは、僕に火を見せたらまたパニックに陥るからと、若い衆に指示を飛ばし消火器を家中からかき集め消火する一方で、水をくみバケツリレーですぐに消火活動をしてくたからすぐに火を消し止めることが出来た。
知らせを受け組事務所から鳥飼さんが駆け付けた。
「パトカーや救急車、それに消防車がいてなかなか前に進めなくて、オヤジ、遅くなってすいません。あのフーは?」
途中から車を下りて走ってきたみたいで、はぁはぁと肩で息をついていた。
「若先生がちょうどいたから、応急手当は済んである。掠り傷だ。たいしたことはない」
「良かった………」
鳥飼さんがそばにへたりこんだ。
「フーが怪我をしたって聞いて、生きた心地がしなかった」
「あの不死身の地竜の弾よけだった男だ。そう簡単には死なない。それに新妻を置いて先に逝くような男じゃない」
鳥飼さんが何かを思い出したのか、ポケットからスマホを取り出すと彼に渡した。
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