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番外編私を信じて

「ナオさん大丈夫?」 そぉーと顔を覗き込んだ。 「うん、ありがとう」 ナオさんの顔は真っ青だった。 「過去を乗り越えたと思ったんだけど、やっぱり、彼の家族に会うのは正直怖い」 「彼って?」 「福光礼ーー許したとはいえ名前を聞くだけで腸が煮えくり返る」 信孝さんが忌々しいとばかりに唇を噛み締めた。 「福光礼って、もしかして前の与党幹事長の長男か?病気を理由に任期途中で議員辞職した」 「さすが詳しいな」 「確か姉がそのあと無所属で補欠選挙に立候補して当選したんじゃなかったのか?」 「そうだ。その姉、額田みずほが折り入って話しがあるらしい。みずほはナオを気遣って何度も会いに来てくれている。でも、ナオが心に受けた傷はそう簡単には癒えるものじゃない」 ナオさんにそんな過去があったなんて。 いつも明るくて、ニコニコと笑ってて。 みんなに優しくて。 子育てだって頑張ってる。 にわかには信じられなかった。 「未知、紗智、那和、いつかちゃんと話すから。待っててくれないかな?」 「いいよ。無理に話そうとしなくても」 「ううん、そういう訳にはいかない」 ナオさんがブンブンと首を横に振った。 「だって未知は、はじめて出来たママ友だもの。それに紗智と那和も僕にはじめて出来た友だちだから。だからこそちゃんと話したいんだ」 ナオさんの決意は並々ならぬものだった。

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