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番外編 私を信じて
「尚也~~‼尚也~~‼」
スポーツウェア姿の小柄な女性が庭から元気に手を振っていた。
千里さん並みに遠くまでよく通る甲高い声にナオさん、はぁ~とため息をついていた。
「ちょっと何?あなた達は」
フーさんとウーさんがすぐに女性のところに飛んでいった。
「尚也、ちょっと助けてよ‼」
「もしかして彼女が額田・・・さん?」
「そう。礼さんには姉が四人いて、一番末の姉。上の三人は未だに僕の存在を認めていないみたいで全然連絡を取り合っていない。だけど彼女だけは、僕を弟として認めてくれてるみたい。それが本当か、あくまで政治家として世間体を考えてか、よく分からないけど。マラソンが趣味でいつもあんな格好をしている」
「そうなんだ。だからスポーツウェアを着ているんだ。代議士さんって聞いていたから、てっきりスーツをビシッと着てくると思っていたから、ちょっと意外でびっくりした」
「本人は、これだけ地味な格好なら目立たないでしょうって言ってるけど、逆にかなり目立ってると思う」
フーさんとウーさんに身ぶり手振り、私はナオの姉です。怪しくないからと必死で説明し、何とか通してもらった額田さん。紗智さんと那和さんが通訳に入ればすぐだったのに、信孝さんが世間知らずの温室育ちの深窓のご令嬢に、たまには世間の厳しさを教えるのもいいかも知れないと、行こうとした二人を止めた。
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