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番外編 私を信じて
「結局あなたは何がしたいんだ?」
「一人の医師が命がけて守ってきた女性を、今度は私が命がけで守りたいの。日本には証人を守る法律がない。彼女は黒竜が知られてまずいことを知ってる。だから、命を狙われているんでしょう?彼が愛した少女たちの命 も当然ながら危ない。不法滞在で中国に強制送還されたら口封じのため、すぐに殺されるでしょうね。だから、彼女たちを連れてアメリカに逃げるのよ」
「みずほさん、一人じゃ無理だよ」
「一人じゃないわ。礼がいる。ねぇ尚也、すこしくらい姉らしいことをさせてよ。あなたの大切なママ友は、私にとっても大切な人だもの。卯月さん、信孝さん、私をどうか信じてください」
額田さんがすっと立ち上がり二人に深々と頭を下げた。
「あなたは黒竜を甘く見すぎている。どこに逃げようが奴等は地獄の底まで追い掛けていくぞ。あなたや礼の命も当然危なくなる」
「恐らく死出の旅になるでしょうね。もう2度と生きて日本の地を踏むことはないでしょうね。すでに衆院に議員辞職願を提出したわ。福光の家屋敷もすべて処分したわ。姉さんたちに一銭たりとも渡したくないからまだ内緒だけどね」
額田さんがスマホを持ち上げ耳にあてた。
「僕、礼さんにだけは会いたくない。嫌・・・・・絶対に会いたくない」
ナオさんが首を横に振りながら急にブルブルと震えだした。
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