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SS ママ友ナオさんの過去
ナオさんが僕に話してくれた過去は、
物心ついた頃から養護施設にいたこと。
6歳年の離れた実姉がいたこと。
12歳の時、姉が福光礼さん(27歳)に見初められ結婚したこと。
なぜか自分までが福光家に引き取られることになり、その日を境にそれまで優しかった姉が手の平を返したように自分に辛く当たるようなったこと。
礼さんは僕に女性の格好をするように強要するようになった。下着から服まで全部。
僕には帰る家がない。
頼れる人もいない。
礼さんに誰も逆らうことが出来ない。
だからまわりの大人に助けを求めても、みんな見て見ぬふり。火の粉を被りたくないから誰一人助けてくれなかった。
やだ、やだ、止めて、お願いだから。
何度も何度も懇願した。
でも礼さんは止めてくれなかった。
きみを一目見たときから、ずっと泣かせたいと思っていたんだ。
だからきみを買ったんだろう。
さぁ、俺の可愛い尚也。
"妻"としての役目を果たしてもらおうか。
そう言って礼さんは僕を…………
そう言うとナオさんはぎゅっと噛み締め、静かに涙を流しながら目を閉じた。
12歳から15歳までの3年間、学校にもほとんど通わせてもらえず、礼さんの相手をさせられたこと。
姉に殺されかけたり、いろいろあって、
僕の心はもう限界だった。
悲鳴をあげていた。
一生籠の中。逃げ道はない。
人生に絶望し、僕は死ぬことばかり考えるようになった。
吉崎さんが生きろ、そう言って家から連れ出してくれたんだ。
吉崎さんは一か八かの賭けに出た。
噂に聞くと福島に住む縣一家の長男は人徳があり面倒見がいい。
彼なら、尚也を礼や福光家から助けらるんじゃないか。
だから信孝さんがすぐそばにいるタイミングで吉崎さんは僕を路上にそっと置いた。
目が覚めたとき、記憶を失っていた。
一時的だけど失語症にもなったんだ。
でも、信孝さんという大切な旦那様に巡り会うことが出来たから、人生捨てたもんじゃない。
うん、そうだよ。
僕もね、ナオさんに出会えて本当に良かった。
ありがとう。
そう言ってナオさんと抱き合い一緒に泣いたんだ。
という訳で本編に戻ります。
脱線してすみません。
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