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番外編ナオさんのお兄さん

「詳細はあとで橘に聞いて。手短に話すわね。それは生前贈与に関する書類よ。礼はね、全財産を尚也と、ママ友として尚也を支えてきた未知に譲ることを決めたのよ。遺言書を残すことも考えたんだけど、それだとほぼ間違いなく姉さんたちが不服を申し立てて裁判を起こすでしょう。だから、それをさせないための生前贈与よ」 「僕は何もしていない。だから、受けとるわけにはいかない」 吉崎さんに封筒を返そうとしたら、 「黒竜に使い捨ての駒のように利用された大勢の女や子供を一人でも多く助けて欲しい。きみには、播本さんや昇龍会、龍一家、縣一家、鷲崎組がついている。きみにしか出来ないことだ。頼む、受け取ってくれ」 深々と頭を下げらてしまい、素直に受け取るしかなかった。 ナオさんも吉崎さんに受けとる訳にはいかないからと、封筒を返そうとした。 これで罪滅ぼしになったとは一ミリ足りとも思っていない。一生かけて償う。だからこれを受け取って欲しい。 礼さんからの伝言を吉崎さんから伝えられ、ナオさんも受け取るしかなかったみたいだった。

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