1067 / 4007
番外編 ナオさんのお兄さん
「あと吉崎。残念だが、さっき話していた二人は男だ」
「マジか」
吉崎さんの顔からみるみる血の気が引いていった。
「ついでに言うと二人とも人妻だ」
「人………妻?それってつまり………」
彼から伝えられた事実があまりにも衝撃的だったのか、目をまんまるくしていた。
「いろんな形の夫婦がいていいんじゃないの。ねぇ、吉崎」
「そうだな」
現実をいまいち受け止めきれないのか、こめかみのあたりを押さえていた。
「さぁ~てと、マスコミが嗅ぎ付ける前にさっさと退散しますか」
大きく背伸びをしながら、額田さんがリビングから出ていった。
「あら、イケメンの見送り付きなの?嬉しいじゃないの。ありがとう」
玄関までだ。多分そう言ってるのかな?
ちょっと困惑気味だったけど、フーさんとウーさんは、信孝さんと一緒に額田さんを送っていった。
「なぁ遥琉。カミさんに自己紹介をしてもいいか?」
「その必要はない。さっさと帰れ」
まさかの塩対応に、
「それ酷くないか?」
吉崎さんは唇をつまみ不満を口にした。
子どもみたいに些細なことでムキになり、口喧嘩をはじめた二人に、ナオさんがぷぷと吹き出した。
「良かったね翔兄さん。"憧れの兄貴"に構ってもらえて」
「憧れの……兄貴?」
「翔兄さんは、遥琉さんの侠気にぞっこん惚れてるんだ。ヤクザの中のヤクザ。兄貴と呼ぶに相応しいカリスマ性を持ってる。あと……」
「ナオそれ以上は禁句!」
慌てたような吉崎さんの声が飛んできた。
ともだちにシェアしよう!

