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番外編 ナオさんのお兄さん

「あの、橘さん……」 ナオさんが茶封筒を大事そうに抱え姿を見せた。 「僕、どうしよう」 額田さんのお姉さんたちに何かされるんじゃないか。それが気がかりなのか、肩を強ばらせ、声も震えていた。 「心配しなくても大丈夫ですよ。私が何のためにいるか、ナオさんなら誰かさんと違って分かりますよね?」 「えっと……菱沼組の顧問弁護士であり、未知の親代わりです」 「そうです。大変良くできました。どっかの誰かさんと違って大変優秀です。ナオさん、私が付いていますから、安心してください」 「でも、佐原さんが」 「彼がどう出てこようが、生前贈与は礼さん本人が決めたことです。それにナオさん一家に今後二度と近付かない。関わらない。と自分たちで誓約書を書いたんですよ」 「誓約書………?」 寝耳に水だったのか驚いて素早くまばたきをしていた。 「被害者はナオなのにな。なんで私たちが頭を下げないといけないの?なんで慰謝料を払わないといけないの?そもそも尚也が悪いんじゃないの、最後は開き直って、名誉毀損で訴えると言い出した。だから、遥琉と橘とで佐原の事務所に乗り込んだんだ。ナオは俺の身内も同然。今後ふざけた真似したらただじゃ置かねぇぞ。もう2度とナオに近付くんじゃねぇ。ドスのきいた声が痺れるくらい、すげぇ格好良くてさぁ、俺、マジで遥琉に惚れ直したんだ」 「またその話しか。耳にタコが出来そうだ」 信孝さんと吉崎さんが戻ってきた。 佐原さんって?小声でナオさんに聞いたら、福光家の顧問弁護士で、一番上の姉の夫。数えるくらいしか会ったことないから僕もよく分からないんだ。そう返ってきた。

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