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番外編 ナオさんのお兄さん

ひまちゃんって声を掛けながらママのお腹を撫でたら赤ちゃんが返事するかもしれないぞ。そうパパに言われた遥香。 「あっ、ひまちゃんがうごいたよママ!パパのいうとおりだ!」 遥香が歓声をあげた。 「陽葵(ひまり)ですか。画数は悪くないですね」 命名の決定権は彼じゃなくて橘さんだ。 「すげぇな、見ただけで分かるのか」 「遥琉、わたしのことをさっきからバカにしていませんか?」 「んな訳ないだろう」 「どうだか」 誤魔化すようにニヤッと笑った彼に、橘さんはほとほとあきれた表情を見せた。 「遥琉さん大変!」 ナオさんが血相を変えて飛び込んできた。 「どうした?」 「あの、えっと………」 息せきを切って、とぎれとぎれに話すナオさんに、まずは落ち着けと彼や橘さんが優しく声を掛けた。 「みずほさんね、ここを出てから立ち寄ったコンビニの前でマスコミに見付かって、取材を受けていたら、突然、男に手の甲を切りつけられたって。今、速報が………」 それを聞いた彼と橘さんの顔色が一変した。 それまでの和やかな雰囲気も一変した。 信孝さんと吉崎さんは急に仕事の打合せが入ったみたいで、30分くらい前に慌ただしく出掛けていった。 「信孝さんと翔兄さん、大丈夫かな?」 ナオさんの表情が暗く沈んでいった。 「古狸といい佐原といい。いずれきっちりカタをつけねぇとな」 彼がそんなことをぼやいていたら、まさしく噂をすれば影がさすで、その佐原さんから橘さんのスマホに着信が入った。

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