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番外編 金の亡者

はじめは無視してやり過ごそうとしていた橘さんだったけど。 何度も何度もしつこく電話が掛かってきて。 『おぃ、橘!どういうことだ、説明しろ!』 通話ボタンを押すなり部屋中に迫力のある怒鳴り声が響き渡り、一太や遥香、そしてナオさんの肩がぶるぶると震えた。 「赤ん坊が寝ているんです。少し、静かにして頂けませんか?」 橘さんは冷静に対応した。 『てメェか、みずほに余計な要り知恵をさせたのは。尚也は福光の恥晒しだ。血も繋がっていないただの性欲処理専用のオモチャだったホモ野郎に生前贈与だと。それだけじゃない。全く赤の他人、ヤクザの女に生前贈与だと?ふざけるな!』 おそらく今まで何度か恫喝されたことがあるんじゃないかな。 ナオさんの顔はみるみるうちに青ざめていた。 「だいじょうぶ、ナオさん?」 「にいにとハルちゃんもいるから、だいじょうぶだよ」 一太と遥香が小刻みに震えるナオさんの手を片方ずつ、小さな手でそっと包み込んだ。 「おぃ、佐原………」 彼が一言、言い返そうとしたまさにその時。 「あのね、おじちゃん。いちたとハルちゃんのだいじなママをバカにしないで!はれくんとみくくんのだいじなママをバカにしないで!ママとナオさんにごめんねして!」 一太が佐原さんに負けないくらいの大きな声で言い返したものだから、彼も橘さんも驚いていた。

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