1076 / 4007

番外編 金の亡者

「……」 ナオさんは俯いたまま小さく頷いた。 「みずほさんも、遺言書があろうがなかろうが相続放棄をしろと、楮山組《かじやまぐみ》の連中を引き連れ事務所に乗り込んできた佐原さんに脅され、念書にサインをさせられたそうですよ」 「やっぱりそうなんだ」 ぽつりとナオさんが呟いた。 「彼のところにもその……何組だって?すっかり度忘れしちゃった」 「楮山組だ」 太惺を抱っこした彼がひょっこりと顔を出した。 「いゃあ、太惺には困った。俺の顔を見るたび下唇をこれでもかと伸ばすんだ。ままたんは夕御飯の準備が忙しいから、駄々しないでもうちょい待ってろと言ったらギャん泣きされるし………あぁ~~待て!頼むから暴れるな」 橘さんを見付けた太惺。 にっこりと笑うと、あーうーとちいさな手足をバタつかせ抱っこをせがんだ。 「心望は?」 「一太たちに遊んでもらってる。紗智や那和がいるから大丈夫だ」 「手が空くまでママといようね」 太惺を彼の腕から抱き上げると、今にも泣きそうな目で見詰められてしまった。 ままたんっ子なのもいいけど、ぱぱたんに焼きもちを妬かれちゃうからほどほどにね。

ともだちにシェアしよう!