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番外編 金の亡者
「……」
ナオさんは俯いたまま小さく頷いた。
「みずほさんも、遺言書があろうがなかろうが相続放棄をしろと、楮山組《かじやまぐみ》の連中を引き連れ事務所に乗り込んできた佐原さんに脅され、念書にサインをさせられたそうですよ」
「やっぱりそうなんだ」
ぽつりとナオさんが呟いた。
「彼のところにもその……何組だって?すっかり度忘れしちゃった」
「楮山組だ」
太惺を抱っこした彼がひょっこりと顔を出した。
「いゃあ、太惺には困った。俺の顔を見るたび下唇をこれでもかと伸ばすんだ。ままたんは夕御飯の準備が忙しいから、駄々しないでもうちょい待ってろと言ったらギャん泣きされるし………あぁ~~待て!頼むから暴れるな」
橘さんを見付けた太惺。
にっこりと笑うと、あーうーとちいさな手足をバタつかせ抱っこをせがんだ。
「心望は?」
「一太たちに遊んでもらってる。紗智や那和がいるから大丈夫だ」
「手が空くまでママといようね」
太惺を彼の腕から抱き上げると、今にも泣きそうな目で見詰められてしまった。
ままたんっ子なのもいいけど、ぱぱたんに焼きもちを妬かれちゃうからほどほどにね。
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