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番外編 金の亡者
「にしても面白いなあの二人」
「あぁ、見てて飽きない」
それまで強張っていた根岸さんと伊澤さんの表情がふっと一瞬だけ緩んだ。
二人の視線を辿るとその先にいたのは鳥飼さんとフーさんだった。
手を繋ぎたいフーさんに対し、仕事には私情を挟みたくない鳥飼さん。
駄目とでも言われたのか、がっかりしてしゅんとしていた。
「久し振りにカミさんに会えたと思ったら、まさかの塩対応。どっかの夫婦を見ているようだ」
「そうだな」
これには根岸さんと伊澤さんも苦笑いするしかなかったみたい。
それから数分後。
彼からメールが届いた。
内容は名刺にあった仙台市内の住所は全部でたらめで、登録してある仙台弁護士会に問い合わせたが早水という弁護士は所属していないという回答が来た。そう書かれてあった。
「大方、古狸が裏で糸を引いているんだろう。佐原と楮山を使って、額田がやろうとしていることを、何がなんでも阻止する魂胆だろうよ」
「やたらと元気な年寄がまた増えたな」
「あぁ、困ったもんだ」
二人がそんな会話をしていたら、シルバーのセダンがハザートランプを点滅させながら路肩に車を寄せ、静かに停車した。
辺りをキョロキョロと警戒しながら後部座席から素早く下りてきたのは、鞠家さんと柚原さんだった。
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