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番外編 金の亡者
鞠家さんはすぐに紗智さんに気付き、にっこりと爽やかに微笑みながら手を振った。
「もぅ、やだ。恥ずかしい」
真っ赤になりながら何故か僕の背中に隠れてしまった。
「何を今さら」
「だって、子どもたちに見られちゃったんだよ」
「一太も晴も未来も、パパとママがエッチなことしてるの見慣れていると思うよ。てかさぁ、朝っぱらから、風呂でいちゃついていればさぁ、当然声だって響くわけだし。まぁ、見てくださいっていってるようなものでしょう?」
「僕はだめって言ったんだよ」
「ずっとお預けくらっているんだもの、我慢出来なくなるのは当たり前だよ」
「え?そうなの?」
キョトンとして那和さんに言葉を返す紗智さん。
「あのね・・・・なんか、頭痛くなってきた」
相変わらずの天然ぶりに那和さんは深いため息をつき、額に手を置いていた。
「ナオ、嫌なことを思い出させるようで悪いが、この男たちに見覚えがないか?」
柚原さんがスマホの画面をナオさんに見せた。
鞠家さんは紗智さんを廊下に連れ出し、子どもたちに邪魔されない限りは今頃、多分だけどいちゃついている。
フーさんも眉を吊り上げたウーさんに仕事の邪魔。見えないところでやれと注意されたみたいで、然り気無く鳥飼さんの手を握り締めどこかに連れていった。
根岸さんや伊澤さんらが見守るなか、
ぎゅっと軽く一度目を閉じてから、恐る恐るスマホを覗き込むナオさん。
そこには両脇を二人の男に抱えられ、足を引き摺りながら、警察署に入る若い男が写り込んでいた。
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