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番外編 金の亡者

「いろいろ調べてみて、ある仮説に行き着いた。確証はなかったが、鳥飼の話しを聞いて確信に変わった」 子どもたちが寝静まるのを待って、みんなをリビングに集めた彼。 「お兄ちゃん助けて!いやだ!わたしの赤ちゃんを返して!女は度々悪夢にうなされていたそうだ」 「女がユズルの妹……いや、そんなバカな……でも、有り得なくもないか」 息を深く吸い込んで、しばらく止めてから息を吐く鳥飼さん。 「私が弁護士になったばかりの年に、ある事件が世間を騒がせていました。ある日突然登校しなくなった小5の児童。義父からの性的虐待を受け妊娠している。すぐに保護してくれと警察に若い男性の声で110番通報があり、警察官が駆け付けると、その義父が頭から血を流し倒れていて、殺人未遂の現行犯でその場にいた児童の兄で中学3年生の男子が逮捕されました。鞠家さんと伊澤さんは管轄が違うから恐らく覚えていないと思いますが・・・・・」 橘さんの問い掛けにいち早く反応したのは鞠家さんでも伊澤さんでもなく、 『女子の敵。クズだわ。一思いに(やれ)れば良かったのよ。あら、やだ~~アタシったら~~今晩は、千里よ。おひさー‼』 ドスのきいた低い声のあと、底抜けに明るい声がどこからか聞こえてきた。 「おぃ、誰だ?千里に電話を繋いだヤツは?」 彼が声を荒げる中、申し訳なさそうにズボンの後ろポケットからスマホを取り出したのは柚原さんだった。 『遥琉、アタシが頼んだの。柚原を怒らないであげて』

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