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番外編 黒い刺客

買い物を終え屋上駐車場に向かうと、剣呑な雰囲気が漂っていた。 「おせえぞボケ。兄貴と先生をどんだけ待たせる気だ」 プロレスラー並みの屈強な体躯をしたスキンヘッドと角刈りの二人の男たちが声を張り上げた。 その背後には品川ナンバーの白いワンボックスカーがエンジンを掛けたまま停車していた。 後ろのドアがすっーと静かに開いて、彼らに守られながら、恰幅のよい初老の男性がゆっくりと下りてきた。 一見紳士的に見えるけど、どこか常人とかけ離れた違和感があった。 そしてその男性から少し遅れてもう一人の男が下りてきた。 長身でバランスのいい体躯に黒のシングルスーツを颯爽と着こなすその男は、彼と同い年くらいに見えた。 写真で見るよりはるかに獰猛な目付きをしていた。酷薄そうな表情、見たものの心を凍り付かせるような残忍さが、その口元に浮かんでいた。 「オヤジ、ヤツがユズルです」 男の顔を一目見るなり鳥飼さんの表情が一変した。彼のもとに駆け付けようとした彼をフーさんが止めた。 「遥琉、気を付けろ。隣にいるのは佐原だ」 危険を察知した信孝さんがナオさんと子どもたちを素早く建物内に避難させた。 「未知も早く!」 ウーさんに守られ重たいお腹を支えながらやっとの思いで僕も避難した。 一太がトイレに行きたいと急に言い出し、橘さんや紗智さん那和さんは、他の子どもたちとまだ建物の中にいることが唯一の救いだった。

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