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番外編 黒い刺客
「息・・・・・出来ない・・・・苦しい・・・・」
ナオさんが息を詰まらせ、ガタガタと震えだした。
「大丈夫だから。ゆっくり深呼吸して」
ナオさんに寄り添い背中を静かに擦った。
「連中に家に乗り込まれたときのことを思い出したのでしょう」
エスカレーターを駆け上がって橘さんが駆け付けてくれた。
「よほど怖い思いをしたのでしょう。救急車を呼びましたからもう大丈夫ですよ」
「ナオパパだいじょうぶなの?」
「パパしがない?」
膝から崩れるようにその場に倒れ込んだナオさんに晴くんと未来くんはぴたりと寄り添うと不安げな目で橘さんを見上げた。
「ナオパパもパパも大丈夫ですよ。一太くんのパパと柚原さんがいますから」
二人をこれ以上不安な気持ちにさせまいと、優しく微笑み返した。
「ちがうよ‼」
「え?何がですが?」
「ゆずはらさんは、たちばなさんのだいじなひとなんでしょう?」
「いちばんすきなひとだって、パパとナオパパがいってたよ」
まさか二人にそう言われるとは予想もしていなかったみたいで、橘さん返答に困っていた。
「姐さん!」「姐さん!」
若い衆のみんなが我先にとエスカレーターを駆け上がってきてくれた。
「子どもたちは?」
「紗智と那和、それに俺らが命に代えてもお守りしています。だから安心してください」
「ありがとうみんな。僕は大丈夫だから、ナオさんと子どもたちを守ってあげて」
お腹を擦りながらみんなに頼んだ。
「縣てめぇか。みずほに余計な入れ知恵をしたのは?」
佐原と名乗った男が毒蛇のような目で信孝さんを睨み付けた。
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