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番外編黒い刺客
鳥飼さんが何を言われたか、言葉が通じなくてもフーさんには何となく分かったみたいで、拳を振り上げユズルという男の胸ぐらに掴み掛かろうとした。
「いいんだフー。侮辱されることも、バカにされることも慣れている。こんなヤツの為に手を汚さないでくれ」
鳥飼さんがフーさんを必死で止めた。
そんな二人のやり取りをユズルという男は興味深そうに見ていた。
「なるほどな、ソイツがお前のイロ(情人)か?」
バカにすると嘲笑った。
「てめぇ、人が黙って聞いてーー」
「卯月、止さんか」
流石の彼も我慢できず鋭い口調で言い返そうとしたら、男性に止められた。
そうこうしているうち救急車とパトカーのサイレンの音がはっきりと聞こえてきて。
くそ、佐原という男が苦虫を潰したような表情を浮かべ舌打ちをしたのがわかった。
「ユズル早くしろ‼」
男が声を張り上げた。
「はい、今すぐ行きます」
さっきまで意気がっていたユズルという男はぺこぺこ頭を下げて車に戻っていった。
「おぃユズル‼黒竜の幹部に取り入り情報を得るために、甥を人質にとり、実の妹をシャブ中毒にして売春させていたお前に鳥飼をバカにする権利はない。お前の妹はモノじゃない。人間だ」
「五月蝿いんだよ」
ユズルという男はそんな捨て台詞を男性に残し車に乗り込んでいった。
あっという間に走り去った車。
地上では何台ものパトカーが車が二階から下りてくるのを今か今かと待ち構えていたみたいだった。
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