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番外編最善の余慶
「未知大丈夫か?」
「ナオ大丈夫か?」
彼と信孝さんが飛んできた。
「僕は大丈夫だから。一刻も早くナオさんを病院に連れていってあげて」
「僕も大丈夫・・・だいぶ落ち着いた・・・・から・・・・」
ナオさんがゆっくりと深呼吸をしながら体を起こした。
「どれ一杯呑んで帰るか」
男性がぐ~~んと背伸びをして僕たちの前を何事もなかったように通り過ぎようとした。
「おぃ、待て。名前くらい名乗ったらどうだ?」
彼が男性の前にすっと歩み寄った。
「いゃ~ぁ、一仕事が終わったあとの酒は最高だな~」
そのあと一階のフードコーナーに移動して、男性は満面の笑みを浮かべワンカップのお酒を開けぐいぐいと呑んでいた。
過呼吸を起こしたナオさんは駆け付けた救急車でここから一番近いM総合病院へと運ばれた。救急隊員を決して疑うわけじゃないけど、信孝さんは晴くんと未来くんを彼に託し、柚原さんと二人、ナオさんに付き添ってM総合病院へと向かった。
あれから随分経つのに男性はいまだ名前すら名乗っていない。
男性は、子どもたちが好きなフライドポテトとたこ焼き、それにアイスを気前よく人数分買ってくれた。
その子どもたちには、もちろん、那和さんと紗智さんも含まれている。
助けてもらった上にご馳走にまでなってしまい、なんだか申し訳なくて……
ありがとうってお礼を言おうとしたら、止せや、背中が痒くなるだろうって先に言われてしまった。
「あの、いい加減名前を名乗ってもらえませんか?」
「あ?」
何故かはぐらかそうとする男性に、さすがの彼も困惑していた。
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