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番外編 最善の余慶

その日のうちに東京へとんぼ返りする予定だった甲崎さんだったけど、場所を度会さんの家に変えて伊澤さんたちと酒盛りをはじめた。 二本松の岳温泉から斉木先生も駆け付けて、愛しの千ちゃんの話題で、夜遅くまで大いに盛り上がっていた。 「ママ、みんなおさけすきだね」 「うん、そうだね」 「パパもおとこどうしのおつきあい、たいへんだね」 「お酒は呑めないんだけどね」 賑やかな声が寝室まで届いていた。 パパとナオパパといままで離れたことがなかったのだろう。不安で寂しくてなかなか寝れずにいた晴くんと未来くん。 そんな二人に一太は絵本を読み聞かせたり、話し相手になったりして、寝るまで側にいてくれた。 お陰ですっかり目が覚めてしまい、布団の中で眠いのに寝れないよ~~を繰り返し、ゴロゴロしていた。 「大丈夫か?」 柚原さんがそぉーと足音を忍ばせ様子を見にきてくれた。 「ごめんなさい柚原さん」 背筋を伸ばし頭を下げた。 「どうしたいきなり」 「子どもたちの世話や彼の子守り、全部橘さんに任せっきりで…………なかなか二人きりにさせてあげられなくて、本当にごめんなさい」 夕方には病院から帰ってきたナオさん。 信孝さんとたまには夫婦水入らずで過ごしたらいいと、彼や橘さんの計らいで、そのまま子どもたちを預かることになったのはいいけど、みんな橘さんの側から離れなくて。 柚原さんは橘さんに近付くことも話すことも出来なかった。 子どもたちがやっと布団に入ったと思ったら、今度は酔っ払った斉木先生にむんずと腕を掴まれ有無いわさず連れていかれてしまった。

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