1102 / 4007

番外編 最善の余慶

「未知は悪くないよ。感謝するのは僕のほうなのに」 「僕はなにもしていないよ」 大挙して押し掛けたマスコミに、閑静な住宅街は一時騒然となった。 彼や度会さんがすぐに駆け付けてマスコミを追い払ってくれたけど・・・・・ 好奇の目に晒されるのは僕もナオさんも覚悟はしていた。でも、ヤクザだということだけで、僕たちを見る世間の目はやはり冷たかった。 「パパ‼」 「はやく‼」 騒動以来、外に出たくても出れなくなってしまったナオさんと子供たち。 久し振りに見る太陽の眩しさと、空のいろの青さに、晴くんと未来くんはおおはしゃぎだ。 「おぅ、待ってろ」 手を振りながら信孝さんは笑顔で二人のもとに駆け寄っていった。 ナオさんと並んでベンチにゆっくり腰をおろした。 「僕や信孝さん、みんな、ナオさんの側にいるから、帽子をとっても大丈夫だよ」 「うん、わかった」 ナオさんが静かに帽子を脱いだ。 遊ぶこどもとそれを見守る両親。 桜並木の小径を犬と散歩する人、ベンチで昼寝をしているサラリーマン。公園にはいろんな人がいる。 あたりの景色をキョロキョロ見回していたら、五十鈴池のほとりの柵の前で一心不乱に竹刀を振る人にたどり着いた。 あれ?

ともだちにシェアしよう!