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番外編 最善の余慶

はっとし思わず息をのんだ。 もしかして他人の空似………? ううん。僕が彼を見間違えるはずがない。 「どうしたの未知?」 不思議そうに首を傾げるナオさんと目があった。 「あそこで竹刀を振っている人、間違いなく惣一郎さんだよ」 「惣一郎さんがこんなところにいるわけないよ。いる訳……」 目を凝らし男性を見詰めていたナオさんが驚いたように、口をぽかんと開けた。 「あ!そうじぃじだ!」 一太もすぐに気が付いた。 「え?そうじぃじ?」 遥香ははじめなかなか姿を見付けることが出来なかった。でも、一太にあそこだよと教えてもらうと、目をキラキラと輝かせて、 「そう~~じぃじ~~!」 紗智さんと那和さんがびっくりするくらい大きい声で叫んだ。 「そうじぃじ!」一太も負けていない。 ビクッと男性の肩が震え、竹刀を静かに下ろすと、こっちを振り返った。 「一太………ハルちゃん………」 惣一郎さんの声は震えていた。 二人に真っ先に見付けてもらったがよっぽど嬉しかったみたいで、涙ぐんでいた。 「いやぁ、まさかこんなところで会うとは思わなかったからたまげだ」 「いちたもびっくりした」 「ハルちゃんも」 「そうじぃじ、いちたとハルちゃんにあいにきてくれたの?」 「あぁ、そうだ。福島県剣道連盟高齢者剣士会の高齢者剣道講習会が終わり次第会いに行くつもりでいたんだよ。一太とハルちゃんにはちと難しいな。ごめんな」 しゃがみこむときょとんとして首を傾げる二人を見上げ、笑顔で頭を優しく撫でてくれた。

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