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番外編 最善の余慶
「卯月未知さんと縣ナオさん初めまして。私は尾形といいます」
「卯月未知です」
ペコリと頭を下げた。
「孫娘が来月に出産予定だって惣一郎さん、そればかり自慢してるのよ」
尾形と名乗った女性が僕のお腹を愛おしそうに見詰めた。
「初めまして縣信孝です。すみません、ちゃんと挨拶が出来ればいいんですが……妻のナオです」
「私はあなたにずっと会いたかったのよ」
尾形さんがナオさんの手を両手で包むと、そっと掬い上げた。
「え?あ、あの…………えっと………」
ナオさんはただただびっくりして固まっていた。
「あんな記事を書かれたら誰だって人間不信になるわ。惣一郎さんからあなた方のことは耳にたこが出来るくらい聞いているのよ。ねぇナオさん、誰がなんと言おうが、あなたは二人の子どもを立派に育てているじゃない。毎日頑張っているじゃない。悪口を言いたい人には言わせておけばいいのよ。だからもう顔を隠さないで。胸を張って生きて。あなたはなにも悪くないんだから…………ごめんね、本当にごめんね」
尾形さんは泣いて謝っていた。
ナオさんがおっかなびっくり、そぉーと顔を出した。
「僕のこと……知ってる人……ですか?」
「彼女の旦那は、儂と同じ警察官だった。福光礼のよくない噂は度々耳にしていたんだが、証拠不十分で裁判所の許可が下りなくて踏み込むことが出来なかったんだ」
「主人は、目の前でSOSを出している子どもがいるのに、助けることが出来なかった。自責の念に駈られ、それを悔やんでばかりいた」
「けいさつ………?おまわり………さん?」
ナオさんがハッとしたように目を見開いた。
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