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番外編 最善の余慶

「名前は分からないけど、僕を助けようとしてくれたおまわりさんがいた。でも、彼の逆鱗に触れて地方の・・・・うんと遠い交番に異動させられたって聞いた。そのひと・・・・・なの?ご主人?」 「えぇ」 尾形さんは笑顔で頷いた。 「ごめんなさい、僕のせいで・・・・」 会わせる顔がないとでも思ったのか、ナオさんはすっと手を離すと、帽子で顔を隠した。 「ナオさん、さっきも言ったけど、あなたは悪くないの、だから、顔を私に見せて」 ナオさんはぶんぶんと首を横に振り頑なに拒んだ。 「ナオ」信孝さんがわなわなと震える小さな肩を静かに抱き寄せた。 「去年の11月だったかしら、主人のところに惣一郎さんから電話があったの。あのときの子供は福島に移り住み、誰もが羨む幸せな家庭を築いている。こっちに来ないかって。それで私たちも福島に移住することを決めたのよ。昔は会うことすら叶わなかったけど、今は、遠くからあなたを見守ることが出来るでしょう」 「あの・・・・・」 ナオさんが静かに帽子を外した。 「ん?」 「えっと・・・・・その・・・・・ご主人は?」 「2か月前に胃ガンであることが判明して、病院に入院しているわ」 「お見舞に行けますか?彼や子どもたちもご主人に会わせること出来ますか?」 「えぇ、もちろん。主人もきっと喜ぶわ」 ずずっと鼻を啜りながら尾形さんが、手で涙をそっと拭った。

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