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番外編 最善の余慶

「卯月さんって………もしかして菱沼組のか?この前、おらのカミさん、自転車とぶつかりそうになって、足を踏み外し側溝に落ちたんだよ。そんとき偶然卯月さんが通りかかって、おらのカミさんを助けてくれたんだ。車さ汚れっからいいって断ったんだが、卯月さんは気にしなくていいって車さ乗せてくれて、家まで送ってくれたんだ。あんときは助かった。ありがとうな」 男性に頭を下げられ、慌てて頭を下げた。初耳だった。全然聞いてないよ僕……… 「卯月さんといえば、オレオレ詐欺も撃退したんだよな」 「うだ。卯月さんや度会のじいさんは何でも相談に乗ってくれる」 「儂ら年寄りの味方だ」 え?そうなの? 次から次に出てくるのは初めて耳にすることばかりで。頭が追い付いていかない。 「あの人一倍焼きもちやきの遥琉がか?」 「信孝さん、人は見かけによらないってよういうでしょう」 「まぁ、そうだけど」 二人も驚いていた。 惣一郎さんが意味がわからず不思議そうに首を傾げる一太と遥香に「パパは弱い者の味方。ヒーローなんだ」って分かりやすく説明すると、二人とも目をキラキラと輝かせていた。 そのあと園内にある武道場に移動して、福島県剣道連盟高齢者剣士会の高齢者講習会を見学させてもらった。 凛とした厳かな雰囲気に圧倒されたのか、さっきまであれほど賑やかだった子どもたちは借りてきた猫のようにおとなしくなってしまった。 気合いの入った掛け声にビックリし目を覚ました太惺と心望。 いつもなら二人とも寝起きが悪く駄々を捏ねるのに。 紗智さんと那和さんに抱っこされ機嫌よくにこにこ笑っていた。

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