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番外編 最善の余計

組事務所「を訪ねてくるご近所さんをすぐに追い払わず、まずは話しを聞いてやる。困っていれば手助けをする。決して見返りを求めるな・・・・・まぁ、そんなことをしているから、本業がヤクザなのか便利屋なのかいまいち分からなくなるんです。意外だったでしょう?あの焼きもちやきで甘えん坊の遥琉が人助けなんて」 ううん、ぶんぶんと首を横に振った。 「惚れ直しましたか?」 「へ?」 きょとんとして顔を上げると、 「図星ですね」 クスクスと笑われてしまった。 「もう橘さんたら」 頬っぺたをこれでもかと膨らませたけど、耳の裏側まで真っ赤になっているのは隠しようもなかった。 「体、しんどくありませんか?」 橘さんが背中を擦ってくれて。 そのまま布団に横になった。 「動悸、息切れ、辛いときは遠慮せずすぐに言ってくださいね」 「ありがとう橘さん」 少し動いただけでも疲れるから、移動する以外なるべく歩き回らないようにしていたつもりだったけど、公園から帰ってくるなり玄関先で動けなくなってしまった。 そのままそこで休んでいたら、今度は急に眠気が襲ってきて、橘さんが若い衆に命じ、玄関から一番近い広間の端っこに布団を敷いてくれた。 何だろう。 すごく温かくて、そして賑やかだ。 目を開けると彼の逞しい腕の中にすっぽりと抱き締められていた。 「おっ、起きたか?未知、おはよう」 惣一郎さんと度会さんが座卓に座り酒を呑み交わしていた。 あっ、そうだ! ここは広間だったんだ。 さっーと一瞬で血の気が引いた。 「だだっ広い部屋の隅に寝せられて、未知が寒くないか、風邪をひかないか、そればっか心配していたんだぞ。それならお前が湯たんぽ代わりになればいいだろうって言ったんだ」 「生真面目な亭主だ」 二人はさほど気にも止めず談笑していた。

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