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最善の余慶
「こら太惺!泡だらけで来るな!」
真っ白のモコモコの可愛らしい姿でハイハイしながらバスタブまで来ると、縁に掴まり、立ち上がろうとしたけど、足もタイルもツルツルで滑ってうまく立てなくて。
それが逆に面白いのかキャキャと声を立てて笑い出した。
「転んで前歯が欠けたら大変だ。ほらおいで。あと心望だ」
太惺と心望を順番で抱き上げると湯船の中に入れた。
「ちょっと熱いか?でもまぁ、みんなカラスの行水だから、すぐ上がるから大丈夫か。パパとママが支えてやるから、好きなだけ立っちしていいぞ」
手でお湯を掬い軽く泡を流したあと、脇の下を支えてあげると足をぷるぷるさせながらも膝の上に立ちバスタブに懸命にしがみついた。
全身泡だらけで遊ぶ一太と遥香を目をまんまるくして眺めていた。
橘さんはそんな4人を愛おしそうににっこりと微笑みながら見守ってくれていた。
逆上せる前に僕は先にお風呂から上がったけど、彼はあれから40分以上子どもたちと一緒にお風呂に入っていた。
4人ともいつもはカラスの行水なのに。
パパと久し振りのお風呂に大喜びして、はしゃいでいた。
橘が毎日子どもたちを風呂に入れてくれているんだ。俺にも出来ると、はりきって1人で4人を面倒みていた彼だったけど、お風呂から上がってくるなり布団に倒れ込んだ。
「パパだいじょうぶ~~?」
「しんじゃいやだよ」
一太と遥香が紫さんから借りてきたうちわを手に彼に駆け寄り、懸命にあおいだ。
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